多くの企業が『自ら考え行動し結果を出す社員』を求め、社員がそのような行動をすることを期待していますが、満足できる状態には至っていません。社員たちはたしかに真面目に仕事に取り組んでくれているのですが、『組織成長への貢献』という観点ではまだまだ改善すべき課題はたくさんある状態です。
このノートでは、このエンジニアリング会社がクロスファンクションチームで『チームによる自主的な組織問題解決』プログラムを行うことになった背景と実施した効果について解説します。
クロスファンクションチームが業務部のパフォーマンスを向上
目指す企業成長を実現するために、社員の貢献力の強化が必要だった!
エンジニアリング会社A社は、工場設備・部品などを販売している企業です。A社は大きく分けて「営業部」「業務部」「総務部」の3つの部署に別れていました。営業部は、お客様への営業活動を行い、新しい注文を獲得してくる部門です。業務部は、お客様に出す見積もりの作成/受注後の納品/在庫管理や仕入先との調整を担っています。総務部は、経営企画/人事/会計などを担っています。A社の経営層が課題と考えていたことは業務部の生産性でした。営業部は以前から取り組んできた営業力強化が功を奏して高額な受注が増え始めていました。注文数が多くなったことは嬉しいことですが、注文の増加に伴い業務部がその量に対処できなくなったのです。業務部のメンバーは納品や受注後の伝票処理などの作業に時間を取られてしまうため、見積作成や仕入れ先との調整は営業が行うようになりました。そのため、営業がお客様に行かなくなるという状況が多くなったのです。
A社は、今後のさらなる成長を目指していました。そのために、業務部にただ人数を増やす対策をとるのではなく、業務の生産性を高める課題解決の実施を決断しました。
組織成長に向けたチームの活動が始まった!
クロスファンクションチームメンバーの選定と目標
A社の経営層と「どのように実施するか?」について話し合い、この業務部の業務改善プロジェクトは営業部・業務部・総務部のそれぞれから主要メンバーを集めたクロスファンクションチームとして取り組むことにしました。選抜されたメンバーには将来マネジメントとして活躍することを期待されている人が選ばれました。ちょうど今までの5カ年計画が終了する時期でもあり、これから行う業務部の業務改善プロジェクトを通して、今後の5カ年計画を遂行できるように能力を高めることも期待されていました。業務部の業務改善プロジェクトであるにも関わらず営業部・総務部からもメンバーが参加したもう1つの理由は、業務部の仕事が業務部だけで完結していないためです。業務部が業務の改善を行うと少なからず営業部や総務部にも影響を及ぼします。営業部や総務部が主体的に業務部の改善に協力するために、営業部や総務部のメンバーもクロスファンクションチームに参加することにしました。
このクロスファンクションチームが目指すのは「会社・組織のさらなる成長のために、現状よりも20%以上の生産性向上をすること」でした。私たちは、このクロスファンクションチームの組織成長・業務改善の活動が成功するための推進支援とコーチングを担いました。
生産性向上のための課題を特定する!
クロスファンクションチームは業務部が対処しなければならない要因の特定から始めました。その要因を探っていると下記のことがわかってきました。◆ 営業とのやり取りに手間がかかっている
◆ システムへ入力する量が増大している(入力エラーも増えている)
◆ 在庫欠品
◆ 業務が属人化している
営業とのやり取りに手間がかかっている
A社の特徴は「お客様」と「取扱商品」の両方が多いことでした。お客様から見積もりの依頼があるとお客様独自の諸条件や要望を間違えないようにするために、業務部のメンバーは営業へ確認することがルールとなっていました。ですが、営業は外にいるためにすぐに返事をもらえないことが多く、その待ち時間が発生し、それが業務効率に悪影響を及ぼしていました。システムへ入力する量が増大している(入力エラーも増えている)
注文量が増えているために、お客様からの注文をシステムに登録する手間も増えていました。お客様によって、Web(EDI)/メール/ファイル/電話やFAXなど注文の方法や納期の回答の方法が様々あり、それぞれに対応する必要がありました。在庫欠品
お客様から注文を頂いても、在庫がなく仕入先への発注や納期の催促をしなければいけないことも時々発生し、これも問題となっていました。業務が属人化している
最後に、業務部は仕事が属人化しており、新入社員がすぐに業務に取り組める状態ではありませんでした。注文数が多い時期はアルバイトや短期派遣などで対処したいのですが、マニュアルもないためにそのような対処ができない状況でもあったのです。それぞれの課題対処を実施する
クロスファンクションチームは、以上のような問題を対処し、業務部の生産性の向上に取り組みました。それぞれの問題に対して、具体的に下記のような問題の対処を行いました。「営業とのやり取りに手間がかかっている」の問題対処の結果
見積作成時の業務部と営業との間のやり取りを減らすために「顧客別の見積価格ガイドライン」の情報をとりまとめました。まずトライアルとして表計算ソフトを利用して、お客様ごと・商品ごとの「仕入れ値に対する掛け率」「納期」「諸注意事項」をまとめ、活用できるようにしました。このトライアルを行ってみると、業務部のメンバーはその情報を見れば営業に問い合わせをしなくても多くの見積を作成できることがわかりました。通常、このような情報の取りまとめを行うことは、営業が協力してくれないことが多く十分に情報が集まりません。営業にとっては、忙しい上に一時的に過度な手間がかかるからです。ですが、A社ではこの問題解決をスムーズに行うことができました。なぜならば、クロフファンクションチームに営業メンバーが入っており、その営業メンバーが思いついた解決策だったからです。
この対処によって、営業が作成する見積件数を10数%削減することができました。今後は、このExcelをデータベース化し、「より検索しやすくする」と「更新頻度でアラームを出せるようにし、長期間情報が更新されていないものは営業へ更新を促すようにする」という対処が行われる予定です。
「システムへ入力する量が増大している(入力エラーも増えている)」の問題対処の結果
お客様からの注文のシステム入力やその注文に対する納期回答は、RPAを導入することになりました。RPAでは十分に対処できないところもあるために、すべてのシステム入力を自動化できたわけではありませんが、いくつかのシステム入力処理にはPRAは強力でした。また、FAXで納期の回答をしなければいけないお客様には、RPAを利用して自動でFAX送信できるようにしました。多くの入力作業を自動化できましたが、発注数があまり多くないお客様が次の問題とわかりました。発注数が多くないために、不定期に都度対応しなければならないからです。そのために、そのようなお客様に対しては、webで注文できるような仕組みを構築しました。お客様にはwebで注文してもらうようにし、それによって、システム入力の手間を削減でき、納品や請求をより丁寧に行う時間を生み出すことができました。
すべての入力業務がRPAで対処できるわけではないのですが、総務部内にRPAプログラムの専門家を育成し、今後は業務の自動化を増やす予定になっています。
「在庫欠品」の問題対処の結果
今までは、月に1回在庫量を確認し、在庫確認の当番が在庫の補充を行っていました。この問題に対しては、それぞれの在庫に対して閾値を決め、その閾値によって黄色信号・赤信号を出す仕組みにしました。その閾値は過去数年間の発注量の平均値を基幹システムから出力し、その平均値と在庫量を比較するようにしました。これによって、月1回の発注ではなく、都度発注できる仕組みとし、在庫欠品を減らすことができました。また、この在庫に関しては、欠品だけが問題ではなく、一部では過剰在庫もあり、場合によっては廃棄していました(現在のところ、この廃棄量は経営に悪影響を及ぼすほどの量ではありませんでした)。過剰在庫については、今後課題解決に取り組めることを検討しています。
「業務が属人化している」の問題対処の結果
A社は、他の多くの会社と同様に季節によって注文件数に変動がある状況でした。1月から3月までは忙しいですが、6月から9月までは余裕のある状況でした。ですが、業務が属人化しており、その忙しいときにアルバイトや短期派遣などで対応できる状況になっていませんでした。そのために、業務プロセスと社内システムの使い方マニュアルを作成しました。これによって、忙しいときに、アルバイトや派遣を採用することで固定費を増やすことなく実施することができるようになりました。
また、現在の社内システムは業務量を測定できません。そのために、それぞれの社員・それぞれのお客様ごとにどの程度の業務量が発生しているか特定できなかったのです。そのことも、「業務の属人化」かつ「業務部としての生産性向上の対策が取れない」原因となっていました。現在、そのような業務量を測定できるシステムへ機能増強することを検討しています。
クロスファンクションチームによる活動の評価 ~ 次は組織成長の仕組みを作る!
A社のクロスファンクションチームは、6ヶ月という時間で業務部の生産性向上に取り組みました。A社のクロスファンクションチームが20%の生産性の向上を目標に取り組んだのですが、もっとも悩ましかったことは「20%の生産性の向上をどのように測定するか?」でした。社内システムが処理数を測定する機能がなかったために、社員に一定期間作業数をカウントしてもらい計測するしかなかったためです。今回は、そのような一定期間測定することを通して、このクロスファンクションチームの活動で、ほぼ20%の改善をしていることを確認しました。また、今回のクロスファンクションチームの活動は、副次的にさらに大きな効果を生みました。A社は「生産性の向上は大切だ」とは思いつつも効果的にできていない状況でした。ですが、今後は「組織が成長し続けるために業務を計測する」という考えが定着し、再構築する検討が始まりました。A社では、現在、このクロスファンクションチームを中心に、今後の組織成長を目指して次なる施策に取り組んでいます。それは、「ジョブ型雇用」の採用です。今回のクロスファンクションの活動を活用して、組織評価・教育体制・給与体系の変革に取り組んでいます。
『チームによる自主的な組織問題解決』によって、自分で考え行動し結果を出す行動を増やそう!
私たちは、社員が自主的に「組織成長に貢献するプロジェクト」を遂行するコーチング・支援をしています。力を合わせて、組織として成長する力を強化し、その仕組みを構築しましょう。このチームによる自主的な組織問題解決の具体的な内容説明の希望・質問・ご依頼は、下記からお問い合わせください(問い合わせ内容には「チームによる自主的な組織課題解決の内容説明を希望」とだけご記入いただければ大丈夫です)。(本ノートは、2020年11月19日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳(てらおたくみ, Takumi Terao)
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