営業担当者間の効果的なお客様の引継ぎ方法 ~ お客様の引継ぎでお客様との良い関係を失わず、さらに良い関係へを発展させるために!

年度末・期末の時期を迎えると営業担当者たちは忙しくなります。組織変更や昇進などにより、営業担当者の間でお客様の引継ぎが必要になるからです。お客様の引継ぎは大切な業務なのですが、その引継ぎを営業担当者任せにしている営業組織は多いです。営業担当者間での引継ぎが上手く行かず、良い関係が築けていたのにそのお客様との良い関係を失っていることも起こっています。お客様との関係は会社にとっては大切な資産。本来であれば、その良い関係を失うことなく引継ぎをすべきなのですがそうなっていないのです。

あなたの会社では、営業担当者間のお客様の引継ぎはうまくいっていますか、大事なお客様との関係が失われていませんか? 今回は、お客様との良い関係を継続できる効果的な営業担当者の引継ぎの方法について解説します。

お客様の引継ぎでお客様との良い関係を失わず、さらに良い関係へを発展させるために!

営業担当者同士のお客様の引継ぎは効果的にできていますか?

年度末・期末を迎えると企業は慌ただしくなります。新しい年度の方針や戦略に合わせて組織変更や昇進が行われるからです。それによって営業担当者たちにはお客様の引継ぎという業務が加わります。ですが、この引継ぎが効果的に行われることなく、せっかく作り上げてきたお客様との関係を失っている場面も目にします。せっかく構築してきたお客様との関係を失ってしまうことは、会社にとって大きな損失です。実際に営業担当者同士の間で行われるお客様の引継ぎでは以下のような問題が発生しています。

こんな営業担当者の引継ぎは最悪! 私の経験談1

以前、私が外資系企業で営業をしていた時にも何度か引継ぎをしました、この体験談1は初めて引継ぎをすることになったときの体験談についてです。すでに5年を超える期間、東海地方のお客様を担当していました。長い期間だったので自分でも「そろそろ移動かもしれないな」と感じていました。当時の上司との関係があまり良くなかったこともそう感じていた理由の一つでした。

案の定、期末を迎える2週間ほど前に「東京への転勤が決まった!」という連絡が来ました。そのため、同僚の営業担当者へ初めてお客様の引継ぎをすることになりました。そのとき、一人の先輩が私に以下のようなアドバイスをしてくれました。

「ここでの引継ぎに時間をかけすぎると移動先での引継ぎの時間がなくなるから、1~2日くらいでさっさと終わらせたほうがいいよ!」

一般的に多くの営業担当者は「他の人への引継ぎは短い時間で済まさないと、次の移動先での営業担当者からの引継ぎの時間がなくなり苦労する」という考えをしています。ですが、私はその時「短い時間でさっさと済ます」という考えはできませんでした。当時、私が担当していたお客様は新しい業務の立ち上げプロジェクトに取り組んでいました。そのプロジェクトを少しでも円滑に推進するために、そのお客様とは頻繁に連絡を取り合い一緒に様々な対策を行っている状況だったのです。その事を考えますと「この度転勤することになりました。今後は新しい営業が担当しますので、あとのことは新しい営業と進めてください!」という引継ぎだけで済ますわけにはいかない状況だと感じていました。

いくつかの企業では、以上のような理由から「お客様の営業担当は変更せずに長く担当したほうが良い」と考えています。ですが、私たちは「適度な期間で営業担当を変更したほうがよい」と考えています。営業担当者が様々なお客様の担当することは新たな経験獲得や成長のチャンスとなります。また、長いこと特定のお客様を担当することでお客様と馴れ合いの関係を助長してしまうことにもなります。そのことが逆に新しい取引チャンスをみすみす失っていることも多いのです。また、同じお客様を長く担当させると営業担当者はおおむね「我流の営業」となってしまいます。若手を育てる能力やマネージャーとしての能力を獲得できなくなり、その人の未来の機会が失われてしまうことにもなるのです。

お客様と健全で長期的な会社対会社の関係を続けるためにも「勇気をもって営業担当者は変更すべき」です。そのためには、会社として営業担当者同士の引継ぎを仕組み化し、マネジメント(支援や管理)できるようにすることが大切です。

こんな営業担当者の引継ぎは最悪! 私の経験談2

もう一つの引継ぎの体験談は、同僚からお客様を引継ぐことになったときの体験談です。その引継ぎがとんでもないものでした。

引継ぎ当日の朝、最寄り駅で同僚と待ち合わせをし、夕方までお客様の引継ぎをしました。その一日だけで80人ものお客様の引継ぎを受けたのです。

その同僚がお客様へ話していたことは「今度、営業担当が変わることになりました。彼(私)が新しい担当です。今、特に問題になっていることはないですよね? 本当にお世話になりました。今後は彼が担当しますのでよろしくお願いします。」でした。そのくらいの短い会話で行わないと1日に80人もの引継ぎができなかったのです。

そのような引継ぎが2時間ほど続いた後、「このままではまずい、お客様についてなんの情報も得られていない、覚えてない!」と感じました。このままでは顔合わせだけで終り、これから新たに新規営業を始めるのと同じ状態になってしまいます。ですが、一人ひとりのお客様とゆっくり話をする時間はなさそうです。そこで、お客様へ「最近ご購入頂いた製品は何か教えていただけませんか?」と聞き、そのことだけはメモに書き留めました。ですが、その前の2時間に面会したお客様にはそのことすら聞けていません。同僚に「このお客様たちは何を購入したのか、その購入品リストと購入理由を後で教えて下さい!」と依頼しましたが、結局教えてくれませんでした。

その翌日も60人と名刺交換をしました。それで2日間に渡る引継ぎが終了しました。結局、お客様の仕事内容/持っている設備/抱えている問題や課題などをまとめることができませんでした。その後、お客様のそのような情報を取りまとめるのに結局7~8ヶ月もかかってしまいました。

多くの営業担当者は、引継ぎのことを「お客様との顔合わせ」と考えています。これでは大切な会社の資産とも言える「お客様との関係」をみすみす失っているようなものです。このようなことが発生しないようにするためにも、営業マネージャーは引継ぎを営業担当者同士に任せるのではなく、責任を持ってマネジメント(支援と管理)をすることが大切です。

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お客様との引継ぎの真の意味とは?

お客様との引継ぎとは、「単なる顔合わせ」ではなく、「お客様との今までの関係を引継ぐ」ことです。引継ぎによってお客様との関係を失うことになってはいけません。また、現在取り組んでいる商談があれば、引継ぎによってその商談が受注できなくなるようになってはいけません。それより、この引継ぎを機会として、過去よりも更に良い強固な関係を構築していきたいのです。

また、営業担当の引継ぎは、お客様にも迷惑をかけてしまいます。今までの経緯がリセットしてしまうことなりかねないのです。たとえば、前任の営業担当者とお客様の間で行われた約束が反故になってしまいます。ですから、そのようなことを最小限にする努力をしなければなりません。引継ぎによってお客様に多大な迷惑をおかけしてはいけないのです。

営業担当者の効果的な引継ぎを行うためにはどうすればよいか?

間違いなく言えることは、法人営業にとって引継ぎとは「単なる顔合わせ」などではなく、「お客様との今までの良い関係性を引継ぐ」ことを目的としなければなりません。そのためにも、引継ぎは下記のような手順で、計画を立てて行うことが大切です。

Step1. 引継ぎする情報を決める
Step2. 引継ぎ計画書を作成する
Step3. 計画に沿って引継ぎを実施する

Step1. 引継ぎする情報を決める

まず、会社として引継ぎをすべき情報を定義します。最低でも引継ぎすべき情報は下記となります。

◆ お客様の連絡先や連絡方法
◆ お客様の組織・仕事内容
◆ 過去購入いただいた商品、時期、導入理由
◆ 現在の商談
◆ 最近のお客様とのやり取り(お客様からの依頼・質問など)

Step2. 引継ぎ計画書を作成する

次は、引継ぎ計画書の作成です。その引継ぎ計画書には下記を記入します。

◆ 引継ぎ期間(引継ぎ日程)
◆ 面会で引継ぎをするお客様リスト(面会日程を含む)
◆ 面会をせず情報だけを引継ぎするお客様リスト

営業担当者は引継ぎ計画書を作成し、その計画について上司と合意をします。その際、上司は「このお客様は面会して引継ぎすべきだ!」「日程が厳しいからこのお客様は面会まではしなくて良い!」という助言をします。また、重要顧客や重点顧客の分類のお客様には、上司もその引継ぎに同席することも検討します。
(【参照】重要顧客・重点顧客の違いと設定方法については、営業力強化ケーススタディ『法人向けサービス会社』 ~ 営業の目標設定力と行動計画力の強化することで、営業担当者の生産性を向上して売上増加を達成!を参照ください)

Step3. 計画に沿って引継ぎを実施する

面会して引継ぎをするお客様は、主に下記のお客様です。

◆ 重要顧客・重点顧客
◆ 過去大きな取引のあったお客様
◆ 現在進行中の商談のあるお客様

このようなお客様には訪問してお客様に挨拶をします。お客様と面会する際に(上述した)引継ぎすべき情報を1つ1つお客様に確認しながら進めます。

「今、特に問題になっていることはないですよね? 今後よろしくおねがいします!」などという表層的なやり取りだけで引継ぎを終わらせてはいけません。Step1からStep3の一連の流れで引継ぎを行うことで、前任者から新しい営業担当者へ情報を確実に引継ぐことが大切です。

都合が合わずに面会できなかったお客様に対しては、前任の営業担当者は上述した引継ぎすべき情報を準備し、後任の営業担当者に情報を引継ぎます。最後に、引継ぎ計画書の実施結果をマネージャーに報告して引継ぎ業務が完了となります。

お客様を大切にするためにも、日頃から情報を取りまとめる!

引継ぎすべき情報とは、実は、多くの企業が活用しているSFA(Sales Force Automation: 営業支援ツール)やCRM(Customer Relationship Management: 顧客管理システム)というシステムに入力して共有化すべき情報です。

引継ぎを効果的にするためには、それらのシステムに情報を残しておくことは大切です。このようなシステムは多機能なために、すべての情報を入力すると手間や時間もかかります。システムへの情報入力にあまりにも時間や手間がかかりすぎると、営業担当者が本来行うべき「お客様との商談活動」の時間が奪っていることと同じです。営業のパフォーマンスを最大化するための障害ともなります。ですので、登録すべき情報は、最低限にすべきです。

先ほどから紹介している引継ぎすべき情報は、引継ぎするときだけに必要な情報ではありません。日頃の営業活動でも整理しておくべき情報です。多くの企業では、SFAやCRMに情報を登録しない営業担当者がいますが、それは、お客様のことを大切にしていないことと一緒です。また、会社の大切な資産を失ってしまうことにも繋がります。営業担当者は、責任を持ってSFAやCRMに最低限必要な情報を入力すべきです。営業マネージャーは、入力していない営業担当者がいれば、入力させるべきです。ただし、繰り返しになりますが、営業担当者に過度な作業をさせないためにも最低限必要な情報に絞ることが大切です。

営業担当者が今までお付き合いさせていただいたお客様に感謝をし、お客様を大切にするために引継ぎをする必要があります。システムに情報を登録していれば、長期に渡るそのお客様の情報を簡単に確認することができるようになります。営業担当者が変わろうとも、会社として長きに渡りお客様に貢献し続けられる体制が構築できるのです。

組織として効果的な引継ぎを計画的に行う体制を築く!

本来、引継ぎとは「お客様との良い関係を円滑に引継ぐ」ことが目的で、そのためには、「名刺交換とあいさつだけという顔合わせ程度」と考えてしまってはだめです。しかし、多くの営業組織は、その「引継ぎ」という業務を大切にせず、営業担当者任せにしています。これが、引継ぎが効果的に行われていないもっとも重要な原因です。

組織変更に伴う営業担当の変更を円滑に引継ぐためには、上記のような手順でマネージャーが関与して行うことが大切です。営業担当者の引継ぎが効果的でなければ、今までの継続的なお客様との関係を失ってしまいます。それは、利益率の低下/お客様の注文リピート率の低下/新規顧客開拓のための販売コストの増加など、多くの財務的な悪影響を及ぼすのです。引継ぎとはそれほど重要なものです。

是非、会社の仕組みとして引継ぎを行ってください。また、そのためには、日常の営業活動の中で情報を整理できるようにしておくことも大切です。もし、実施しても上手くいかなければ遠慮なくご連絡ください。私たちがあなたの会社の大切な資産である「お客様との関係」をこれ以上失うことがないよう、貴社の体制を構築するお手伝いをします。

(本ノートは、2008年10月26日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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