営業という活動も「商談を生み出し、それを確実に受注していく『商談というものづくりの工程』」と考えることができます。受注に向けた営業活動の生産性・信頼性・品質を高めるためにも5Sは有効です。業績(パフォーマンス)の良い営業組織は5Sという規律を徹底しています。集めるべき営業情報・必要な行動が明確で訓練されており、そのことから営業たちの意欲が高い状態を実現できています。その逆に、業績が悪い多くの営業組織は5Sを徹底していません。そのため、すべきことがはっきりしておらず、場当たり的でコロコロ変わるために、営業たちの姿勢に悪影響を与えています。
今回は「商談を生み出し、それを確実に受注していく『商談というものづくりの工程』」の生産性・信頼性・品質の向上を目指し、営業現場における規律(5S)を発揮するヒントについて解説します。
受注に向けた営業活動の生産性・信頼性と営業の意欲を高めるために、営業組織の規律(5S)を徹底する方法
ものづくりにおける5Sの定義とは?
「ものづくり」という生産管理の観点での5Sの定義は、一般的に下記のように説明されています。【整理(Seiri)】 必要なモノと不要なモノを明確に区分し、不要なモノを捨てること
【整頓(Seiton)】 必要なモノの置き場所・置き方を決めること
【清掃(Seisou)】 必要なモノをきれいにすること
【清潔(Seiketsu)】 整理・整頓・清掃を繰り返し、必要なモノが汚れのない状態を維持すること
【躾(Shitsuke)】 決めたことを必ず守ること
整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)、それぞれのローマ字読みの頭文字が全て「S」のため、5Sと呼ばれています(【注意】インターネットには、5Sの定義や説明には幾つもの表現があります)。
ものづくりにおける5S 「整理」と「整頓」
生産現場では、入荷された材料を道具や設備で調合・加工・組立し、そして、製品を生み出します。その一連の工程において、5Sの2つの要素「整理」と「整頓」は、主に生産性を高める上で重要な要素です。「材料はどこにあるのか?」「加工する道具はどこにしまってあるのか?」をはっきり決めておかないとそれらを探す手間がかかります。その「探す」には意外と多くの時間が使われており生産性に悪影響を及ぼします。ものづくりにおける5S 「清掃」と「清潔」
5Sの次の2つの要素「清掃」「清潔」は、主に信頼性・品質の高さを高める上で重要な要素です。作業環境・入荷した材料・工具や設備が汚れていると、生産する製品に汚れやゴミが付いてしまいます。すなわち、質の悪い製品を生産してしまうことになり、信頼性や品質に悪影響を及ぼします。そのために、「清掃」し、「清潔」な状態を維持することが重要です。ものづくりにおける5S 「躾(しつけ)」
5Sの最後の1つ「躾(しつけ)」は、整理・整頓・清掃・清潔を継続する決意と継続した努力で、生産性と品質の高さを持続する上で必要な要素です。継続しないと生産性・信頼性・品質を高い状態を維持できません。「躾(しつけ)」は、5Sのうちで最も重要と言われているものです。営業で規律が浸透していない原因とは?
営業という活動が「商談を生み出し、それを確実に受注していく『商談というものづくりの工程』」であるならば、営業現場においても5Sは営業活動の生産性・信頼性・品質を高めるために適用すべきものです。しかし、工場などのものづくりの現場と比べますと、営業現場ではまだまだ5Sという規律の徹底度は低い状態です。その原因は、工場と営業では「仕事の行われ方」が違うためです。工場と営業の違い1. 目で見えるか見えないか!
工場であれば、生産するものは「形あるもの」です。材料でも道具でも形があり、目に見えるものです。しかし、営業活動で扱われるものは原料でも道具でもなく、お客様との「商談情報」です。情報ですから形として目に見えるものではありません。そのため、整理・整頓は難しくなります。営業組織において5Sが徹底しづらい1つ目の原因は、「目で確認しづらい情報があつかわれているから」です。工場と営業の違い2. 仕事はどこで行われるか!
2つ目の原因は、行われる場所です。工場であれば、通常は会社の敷地内にあります。社内ですので「5Sの各要素が実現できているか?」をいつでも多くの人が観察することができます。しかし、「商談」が行われている場は、お客様先すなわち社外です。お客様の会社内で行われますので、「どのようなことが行われているのか?」を観察することが難しいのです。2つ目の原因は、「社外でおこなわれているから」です。工場と営業の違い3. 画一したものではない!
3つ目の原因は、営業が行う商談の進め方はお客様によって変わる、いうことです。工場であれば、同じ製品を製造するために、同じ材料・工具・設備を使い、同じ動作が求められます。ですが、営業が行う商談は、お客様によって進め方も扱う情報も異なります。ですので、「何が良くて、何が悪いのか?」がはっきり分かりづらいのです。重要な「営業情報」が具体的になっていない!
営業情報のうち、特に規律が徹底できないないのが商談情報です。以上の3つの原因により、多くの営業現場では商談情報における5Sが徹底できていません。そのために営業マネージャーと営業との間で下記のような会話ばかりが行われています。◆ 買ってくれるのか、買ってくれないのか?
◆ いつ注文になるんだ?
このことは、「商談を生み出し、それを確実に受注していく」という目的のためにどのような商談情報が取り扱われるべきか」が決められてないために発生します。営業が取り組む商談の生産性も信頼性も品質も高めることができていない状態になっています。
「商談を生み出し、それを確実に受注していく『商談というものづくりの工程』」における規律の定義とは?
営業が扱うべき「商談情報」は見えづらく観察しづらいものです。「商談を生み出し、それを受注していく『商談というものづくりの工程』」において生産性・信頼性・品質を高めるためには、工場と同様に商談情報においてもその規律(5S)を徹底することが大切です。「商談を生み出し、それを確実に受注していく『商談というものづくりの工程』」における商談情報の規律(5S)は下記のように定義できます。
【営業における整理】 商談に必要な情報は何かを決める。
【営業における整頓】 決められた場所に商談情報を保管し、すぐ確認できるようにする
【営業における清掃】 商談情報のうち、受注するために必須となる情報を集める(他の余分な情報は取り除く)
【営業における清潔】 整理・整頓・清掃が繰り返し、確実に受注するために最低限必須となる情報を維持する
【営業における躾】 上記の決めたことを必ず守る
営業組織において、商談情報の規律(5S)を高めるためには、まず商談の各工程において、必要な情報は何かを定義し、それをどこに置くかを決めます。そして、営業はその情報を収集するように徹底します。「商談においてどのような情報を取り扱うべきか?」が定義されると、それぞれの商談の状況を正しく把握することができるようになります。そして、現状を正しく把握できれば、「商談を先に進めるためにはどうすればよいか?」という計画的な営業が取り組めるようになります。
その結果、生産現場で5Sを行う理由の1つでもある「ムダな時間をなくす」、すなわち、営業の「意味のない無駄な活動や作業」を減らすことができます。また、「商談においてどのような情報を取り扱うべきか?」を明確にすることは、営業一人ひとりの能力を強化することもできます。その収集した商談情報を定期的に質的な観点で見直すことで、5Sの「清掃」「清潔」に相当するような不要な情報をなくし、受注するために必要となる情報に絞り込むことができます。このようなことを通して、商談の生産性・信頼性・品質を高めるのです。
どのような営業情報を集めるかは扱っている商材によって違います。自社の営業にとって、最適な情報を選択する必要があります。一般的には、営業組織で規律(5S)を持って扱うべき営業情報は以下です。
◆ 売上目標と売上見込情報
◆ 案件・商談情報
◆ 面談計画情報
◆ 主要顧客との関係構築情報
(集めるべき営業情報につきましては、「決定版!営業組織のパフォーマンス(業績)改善の教科書 ~ 営業管理の状態から「組織と個を成長させる営業マネジメント」へ 」を参照ください。)
集めるべき情報を決めたら、それを文書にしてまとめ、営業の誤解や勝手な解釈をなくすための対策が必要です。ですが、営業組織はあまりそのようなことが得意ではなく、「今後こんな情報を書くように!」「今後はその情報は別の場所に書くように!」など、口頭での指示しかしていない事が多いです。
5Sを徹底できていない営業組織で発生している問題
あるクライアント企業で実際に起っていたことですが、その営業組織では「商談」と「案件」の定義がなく、営業マネージャーの使っている「商談」と「案件」の意味合いと営業たちが考えていた意味合いが違っていました。このことから「売上予測が大きく違っている」「商談を増やすための対策が適切なものではない」という問題を引き起こしていました(営業たちは「商談と案件は一緒の意味」と考えていましたが、営業マネージャーは「案件は具体的になっていないもの、商談は具体的になっているもの」と考えていました。「具体的とはなにか?」も考慮しなければなりませんが)。営業情報の5Sを行い、営業の生産性と信頼性を高めよう!
このような問題をなくし営業組織の生産性・信頼性・品質を向上するために、私たちは「最低限とり扱うべき必要な情報を決定する支援」そしてそれらを「SFA(Sales Force Automation)やExcelなどの商談管理ツールで効果的に活用する支援」を行っています。もともと営業組織は規律(5S)が徹底しづらいです。ですが、情報の体系を整えれば、難しいことではありません。営業組織の業績(パフォーマンス)の良い企業は、規律(5S)が徹底されており、そのために集めるべき営業情報が管理されており、そして、すべきことが明確なために営業たちは高い意識で仕事に取り組んでいます。あなたの会社で営業情報体系を構築する必要があれば、是非お問い合わせください。私たちが貴社と力を合わせて、その構築・定着の支援をいたします。
(本ノートは、2008年9月21日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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