営業である以上、「目標達成は当然のこと」とは言え、年々達成することが厳しくなっています。「年初/期初に見込んでいた商談や案件が見込み違いだった!」「目標達成に向けて最低限必要な新しい商談や案件の発掘が思うようにできていない!」などにより「当初の売上見込みと実績のギャップがだんだん大きくなる」という問題に直面します。
売上目標を達成できるマネージャーは、このような状況にならないようにするための「数字づくりの対策」ができています。今回は、年々売上目標達成が難しくなる中、できるマネージャーが行なっている「数字づくりのギャップ対策」について解説します。
できるマネージャーたちが行っている「数字づくりのギャップ対策」
売上目標達成が厳しくなっている営業の状態とは!
新年度(新しい期)の営業活動がスタート!
毎年/毎期のはじめに、会社が立てた経営目標にもとづいて営業部門の売上目標額が決まります。その売上目標額は、例えば「前年度の売上実績に対して10%増加した数字」などのように決定されます。営業部門の売上目標が決まると、それが営業部、営業課、そして、営業個人の売上目標として分配されます。そのような一連の流れを通して新年度が始まり、営業たちの新たな売上目標達成に向けた活動が始まります。2ヶ月、3ヶ月と時間が過ぎていくと、売上目標に対する達成度がだんだん悪くなってきます。そうすると、マネージャーは営業に対して、「目標の達成度が良くない、このままでは売上目標が未達になる、もっと頑張るように!」と厳しい状況を伝えます。
これに対して、営業はそれぞれの商談の進捗度合いについて下記のような報告をします。
◆ 購入検討しているお客様がいない
◆ この商談はなかなか予算がつかない
◆ 競合が商談に関わってきて大変になっている
営業たちも目標を達成しようと頑張っています。マネージャーもこの段階では「まだ年度末/期末までに時間があるからなんとかなるだろう!」と考えています。
期末が迫ってきた!
その後、だんだん期末が迫ってくると下記のような悪い報告が増えてきます。◆ この商談は受注できなくなった!
◆ この商談は来期へ延期となった!
◆ この案件は、お客様が買う気にならなかった!
◆ お客様の予算が削減された!
それに対して、マネージャーは「とにかく何とかしろ!」という語気を強めた指示をします。期末が迫っているこの段階では合理的な対策を行う余裕はなく「なにしろなんとかしろ!」という営業の気合と根性を頼りにした指示ばかりになります。
営業たちも手持ちの案件が少ない状況ですので、思うように売上を回復することができません。営業は、買ってくれそうなお客様を探すことに集中し、または、来月/来年に売上予定だった商談を前倒しして受注しようとします。今買ってくれるのであれば大きな値引きをします。最終的にはやっとの思いでその年を乗り切ります。
年度末/期末とともに迎える来期の売上目標設定!
年度末/期末とともに迎えるのが来期の売上目標の設定です。企業は継続して成長する使命を負っています。そのため、経営層は今期よりも売上目標額を増やそうとします。ですが、すでに説明したとおり、営業は来期受注予定分の案件を値引きまでして今期中に売り上げてしまっています。来期に向けた案件総数が少なくなっているのですが、売上目標だけが増えるのです。多くの営業部門がこのような悪循環におちいっています。このような悪循環を打破しなければならないのですが、それができずにいます。
なぜ、毎年売上目標の達成が厳しくなっているのか?
このような悪循環の状況になってしまう原因は下記の3つです。原因1. 競争がますます厳しくなる!
原因2. 年初/期初の計画と対策が不十分!
原因3. 毎月の売上目標管理が不十分!
原因1. 競争がますます厳しくなる!
1つ目の原因は、営業状況がますます厳しくなっていることです。例えば「顧客の購買意欲が低下している」「競合との優位性がなくなっている」「価格競争に巻き込まれ簡単に販売できなくなっている」などです。多くの顧客は既に多くの設備などの資産をもっており、「どうしても購入しなくてはいけない!」という商談は少なくなっています。コスト意識も徹底し、投資対効果のあるモノしか購入しません。購入するにしても、多くの商品情報を手に入れて価格面や機能面で比較検討を行い、より厳格に購入するかどうかを判断するようになっています。
そんな中、競合は機能面や性能面などで商品力を高めていますから、私たちの商品と大きな差はなくなりつつあります。圧倒的な低価格で販売を増やしているライバル会社が出現するなど、価格競争にも厳しさを増しています。撤退するライバル会社もありますが、その一方で以前は競合することがなかったような新しいライバル会社も発生し、少ない需要を奪い合う状況が続いています。そんな状況でも「なんとかしなければいけない!」のが営業です。
原因2. 年初/期初の計画と対策が不十分!
2つ目の原因は、営業状況がますます厳しくなっているにもかかわらず、売上目標の達成に向けて年初/期初に計画的な対策ができていないことです。「なにか買うものがありませんか?」という御用聞きの営業(ルートセールス)で商談が見つかる時代ではありません。お客様は、そのような単なる御用聞き営業に依頼するよりもインターネットで探します。ですが、多くの営業部門は以前と同じように勘と気合で頑張って何とかしようとしています。売上目標の達成に向けて年初/期初に計画的・合理的に検討していないために、売上目標の達成がだんだん難しくなっているのです。
原因3. 毎月の売上目標管理が不十分!
そして、年初/期初に十分な計画ができていませんから、毎月の営業管理/営業対策が中途半端な状況になっています。多くの営業部門が行っている売上目標管理は下記のようなものです。◆ 今月の売上予定金額
◆ 来月の売上予定金額
◆ 商談の進捗度の確認
このように、多くの営業マネージャーは今月/来月の売上目標と売上予測額の管理をしています。ですが、年間売上目標(期間売上目標)と現在の売上実績とそのギャップを明らかにし、営業に対して具体的な指示ができているマネージャーはほとんどいません。営業状況がますます厳しくなっているにもかかわらず、多くの営業部門のマネージャーたちは景気の良い時代でしか通用しない営業管理と対策を行っているのです。
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できるマネージャーたちが行っている数字づくりのギャップ対策とは!
このような厳しい営業状況においても売上目標を達成しているマネージャーが存在しています。彼らは、年初/期初に数字づくりのための計画を立案し、毎月その達成度を測りながら対策を講じています。前述したマネージャーとは違い、できるマネージャーたちは下記のような具体的な「数字づくりのギャップ対策」を行っています。年初/期初に現状を把握する!
すでに解説したとおり、多くのマネージャーは、年初/期初に売上目標額を決定するだけで新年度をスタートしています。ですが、これではあまりにも準備不足・計画不足です。マネージャーにとって、年初/期初に現状把握をすることは必須条件です。まずは、現在の商談状況の把握から始める必要があります。具体的には、下記のような分類で保有している商談状況を把握します。[分類a] 成約の可能性が高い案件の総額
[分類b] 意識的に取り組まないと成約が難しい案件の総額
[分類c] 売上目標作成の為に「売れるんじゃないか?」と営業が期待している見込み案件の総額
例えば、ある営業チームの売上目標が10億円、そして、商談状況が下記だったとしましょう。
[分類a]の総額2億円 目標との差: 8億円(=10億円 – 2億円)
[分類b]の総額4億円 目標との差: 4億円(=8億円 – 4億円)
[分類c]の総額2億円 目標との差: 2億円(=4億円 – 2億円)
この場合、成約の可能性が高い[分類a]の案件が2億円ありますから、その分を差し引きますと目標達成までに8億円分の受注が必要です。マネージャーはこの8億円を埋めるための施策を検討する必要があります。
以上のように、まずマネージャーは年初/期初に「売上目標を達成するには本当にいくら足りなのか?」そのギャップを正確に把握することが大切です。それができるからこのギャップを埋める数字づくりの対策ができるようになるのです。
目標とのギャップを埋める施策を実施する!
ギャップが明らかになったら、次に行う対策は下記の4つです。◆ [分類a]の成約の可能性が高い案件を確実に受注する
◆ [分類b]の意識的に取り組まないと成約が難しい案件を[分類a]へ確度を高める
◆ [分類c]の売上目標作成の為に「売れるんじゃないか?」と営業が期待している見込み案件を[分類b]へ確度を高める
◆ 新たな[分類c]となる機会を発見する
一般的なマネージャーは「目標の達成度が良くない、このままでは売上目標が未達になる、もっと頑張るように!」という抽象的な指示しかしていません。ですが、継続して目標達成を続けるマネージャーたちは、そのような抽象的な指示ではなく、上記のような具体的な指示をしています。「具体的な指示ができること」が継続して目標達成ができるポイントなのです。
そのためにも、売上目標と現状のギャップは、チーム全体のものと営業一人ひとりのものを準備することが重要です。営業一人ひとりのギャップを明確にすることで「全員、新規の商談を開拓するように!」というような一律の指示ではなく、一人ひとりにより具体的な対策の指示をすることができます。例えば、下記のような営業一人ひとりの状況に応じた具体的な指示です。
◆ Aさんは目標金額に対して、案件数を積み上げても6000万円足りない。[分類c]の案件を作る。そのためのプランを検討しよう。
◆ Bさんは、目標金額に対して新規の商談数は十分だから、[分類a]と[分類b]の商談を確実に受注するように!
以上のように、営業一人ひとりの状況に見合った具体的な対策の指示を行うからこそ、営業一人ひとりの活動の質を高めることができます。現在の営業マネージャーには、このような営業一人ひとりの状況に応じて指導・コーチングする能力が求められているのです。
また、ギャップを埋めるためには、下記のようなことを営業と話し合い、具体的な重点項目について合意します。
◆ どのお客様を重点とするか?
◆ 新規お客様への営業活動、既存のお客様への営業活動、どちらを重視するか?
◆ どの商品の商談開拓を重視した行動をするか?
このように売上目標の達成に向けたギャップを埋める数字づくりの対策を明らかにして年初/期初を迎えるのです。
毎月のように達成度を確認し、追加対策を実施する!
さて、新年度が始まったら、継続して「目標/売上実績/ギャップの推移」を把握します。例えば、4月に新しい事業年度が始まり、その半年間の売上目標が10億円だったとしましょう。その4月時点での状況は下記でした。[分類a]の総額2億円 目標との差: 8億円(=10億円 – 2億円)
[分類b]の総額4億円 目標との差: 4億円(=8億円 – 4億円)
[分類c]の総額2億円 目標との差: 2億円(=4億円 – 2億円)
4月、5月、6月、7月と4ヶ月が過ぎました。その時点での数字が下記でした。
[受注] 7億円の受注済み(残り3億円)
[分類a]の総額1.5億円 目標との差: 1.5億円(=3億円 – 1.5億円)
[分類b]の総額0.5億円 目標との差: 1億円(=1.5億円 – 0.5億円)
[分類c]の総額3.0億円 目標との差: -1.5億円(=0.5億円 – 1.5億円)
以上のように、毎月の商談の状況の変化を把握します。これによって、年初/期初に計画した対策がそのままでよいのか、それとも、追加の対策が必要なのかを明らかにすることができます。できるマネージャーは、上記のような目標と現状のギャップによる数字づくりの対策を行っています。そして、このようなマネージャーは部下たちの信頼度も高く、部下たちもマネージャーの指示を信頼して行動に移しています。
年初/期初の「数字づくりのギャップ対策」における目標設定が大切!
営業にとって、年初/期初のギャップ対策が大切です。ですが、年初/期初のギャップ対策をしている営業マネージャーは多くありません。営業マネージャーがギャップ対策をすることで、その営業チームの目標達成の可能性が格段と高まります。できるマネージャーは、このノートで解説した目標と現状のギャップによる数字づくりの対策を行っています。本来、すべてのマネージャーは当たり前のようにこのようなマネジメントができなければなりません。私たちは、この「数字づくりのギャップ対策」をクライアント企業内で導入するお手伝いをしてきました。この「数字づくりのギャップ対策」を営業部門内に定着するには、下記のような手順が効果的です。
◆ 現在の営業状態の診断
◆ 年初/期初の現状把握の体系の確立
◆ レポート方法の決定
◆ マネージャー向けトレーニング
◆ 営業向けトレーニング
このように営業部門の業務の運用方法を見直せば目標達成の可能性は格段と高まります。是非、貴社の目標達成に向けて実施してください。もし、上記を実施してもうまくいかない場合には、遠慮なくお問い合わせください。私たちが、貴社の営業マネージャーの営業管理能力強化の支援をいたします。
(本ノートは、2009年7月30日に書かれたものを再編集しました)
文:ティ・スクエア㈱ 寺尾 卓巳 (てらおたくみ, Takumi Terao)
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